特別編:ウィズ・コロナ下での売上改善事例(事例1)


今回は「特別編」と題して、いつものQ&Aではなく、コロナで売上が減少してしまった「整骨院」の売上改善事例をご紹介します。


ちょっと特殊な例なので、応用できる方・出来ない方いらっしゃると思いますが、

「なぜその戦略を取ったのか?」という決断にいたるまでのプロセスは、

どのビジネスでも応用できるはずなので、まだ売上が戻らない事業者様はご参考なる部分は取り入れていただけたらと思います。



まず概要から説明すると、県内の某整骨院さんが今回の舞台になります。

コロナ禍以前は大儲けというわけではありませんが、それなりに経営できている損益状況でした。

それがコロナによって少しずつお客様の足が遠のき、同業者でのクラスター発生などのニュースが決定打となり、結果営業自粛をし、グンっと売上が減ってしまいました。


ここまでは県内の同業者はどこも同じかと思います。


ただ、ここの院長さんは「文句や愚痴ばかり言って」無駄な時間を過ごす。

という愚行をしなかったのです。

まずは休業期間中に、私と一緒に顧客リストの洗い出しを行いました。

性別・年代・治療患部のデータ分析はもちろん、ニュースを逐一チェックして、

緊急事態宣言の解除後は、どの年代の、どの患部の患者さんが増えそうか?ということの予想計画を作成しました。


院長さんが考えたのは、今までは学生。つまり部活動で怪我をする子が多かったが、しばらくは部活動は活発にならないはずだから、しばらくは10代客は戻らないだろう。一方、不要不急の外出自粛の影響により、筋力が衰えたお年寄りは腰痛・ひざ関節痛などがひどくなり、その年代・患部の患者が増えるだろう。との予測を立てました。


さらに、電話で患者さんに「今のお加減はどうですか?」や「緊急事態宣言が解除されたらまた来れそうですか?」などを積極的に聞くことにしました。すると、「本当は行きたいんだけど、コロナに感染したくないからしばらくは行けないかも」という回答が大半でした。


そういった顧客情報やアンケート結果、さらに内部環境や外部環境をSWOT分析し、

それを「クロスSWOT分析」に落とし込むことにしました。

「強み×機会」や「弱み×機会」、「弱み×脅威」など色々な戦略を検討した結果、

院長さんと選んだのは「強み×脅威」の「差別化戦略」でした。

より具体的にいえば、田舎で駐車場が広い整骨院の店舗(強み)だったので、

感染の恐怖による外出自粛(脅威)を克服するために、

3蜜を避けられる「駐車場での屋外診療」を始めることにしました。


前述のとおりですが、ターゲットやそれに対するサービスが明確化しているので、「当院はこれだけ感染症対策を徹底していますよ」という差別化戦略の具体的内容を書き留めた既存客向けダイレクトメールを発送することにしました。

ここで重視したのは、一般的なダイレクトメールによくある「うちの商品はこんなにすばらしいよ」というサービス性能のアピールではなく、当院が行っている「感染予防対策」の内容をわかりやすく説明することでした。ひざをこのように治療しますよ!腰をこのように治療しますよ!とは書きませんでした。

密にならず換気のよい屋外で診療を行います。絶対に素手では患者さんに触れません。毎回必ず新品の手袋を使います。前の患者さんが使ったシーツは取り替えます。事前に消毒をしておきますがもう1度患者さんの目の前で治療器具を消毒します。マスクとフェイスシールドを2重でします。施術者は定期的に検温を行い体温が37.5度以上の場合は直ちに予約者様へ連絡を行い診療をキャンセルさせていただきます。他の患者さんとすれ違わないように予約時間に余裕を持たせて診療してます……etc 診療の質ではなく感染防止対策を過剰とも言えるほどに列挙しました。


しかし、事前のアンケートにあった通り、「本当は痛いから治療してほしいけど、怖いから行けない人」は、治療内容よりも、感染防止対策がどの程度のレベルで行われているのか?が行く・行かないの判断基準になっていたため、結果営業再開後すぐに患者様を呼び戻すことに成功した。という事例になります。


もう少し、損益の話を詳しく説明すると、

コロナ拡大前の営業利益の8割までは回復しているそうです。

やはり、屋外診療だと一度に何人も患者さんを呼べないので、多少価格を上げさせてもらい、数よりも単価を取って安全に予約制で診療ローテーションを組む。という形で運営されている事例になります。



今回の話で参考にしていただきたいのは、決して「屋外営業+完全予約制にすれば密にならないから、安心してお客さんが来てくれますよ」ということではありません(笑)

例えば、ライブハウスなら、屋内よりも野外ライブでやるほうが感染リスクが経るかも知れないので野外ライブを計画するとか、応用できそうな方は応用してくれればいいですが、今回の本旨はそういったことではありません。


①休業期間中にあなたは何をしていましたか?

②現状分析をちゃんとやっていますか?

③顧客にアンケートを取っていますか?

④クロスSWOTなどツールを使って戦略を立てていますか?

⑤現状分析やアンケートを基にしたターゲティングが出来ていますか?


という部分が、今回の事例で言いたかったことになります。

今回は初めての事例系記事になりますが、少しでも皆様の参考になりましたら幸いです。

評判がよければまた事例記事を掲載したいと思います。



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